いつの頃からか、郵便ポストに“それ”が入っているのに気がついた。
「なんだ、コレ?」
数行書かれただけで、差出人も宛名もない、小さなメモ。
誰が、いつ、このメッセージを残しているのかダイスケにはわからなかった。
ワープロで打たれた文字からは、相手の顔も思い浮かばない。
しかし、“好きです”“いつもあなたを見ています”“あなたのことを思うと胸が苦しく、そして自分がすっかり恋に落ちてしまっていることに気がつくのです”“いつか、あなたと一緒に幼い頃によく行った、遊園地の観覧車で夕日を一緒に見てみたいです。良ければI今度一緒に行きませんか?”、と相手が自分を好意的に思っていることは感じ取れた。
久しぶりにラブレターを貰ったダイスケは、まだ見ぬ差出人にアレコレ想像を巡らせてみる。
この間下の階に引っ越してきた女子大生からだろうか。それか、カブキロードでよくすれ違うあの娘かもしれない。
それとも、本命アントニアからとか……!!いやいや、大穴でキョウコからということも……。
と、一晩中考えても答えの出ない謎に悶々とし、数日が過ぎていった。
「あのさ……」
急に、一緒に飲んでいたクレアが口ごもる。
「それで返事なんだけど……一緒に行ってくれる?」
「……なんのことだ?」
「何って……“遊園地に一緒に行かない?”ってこの前聞いたじゃないか!!」
「だから、いつお前がそんなことを……」
と、言いかけながら、“あること”に気がつく。そうか、まさか。
「僕が手紙を入れておいただろ!……まさか、ダイスケ。読まずに捨てたって言うんじゃないだろうな?!!」
「捨ててない。てか、お前からって気付くわけないだろ!!」
気がついてほしいなら、サインするなり手書きにすればいいだけの話だ。
しかし、精一杯のお誘いを誤魔化されたと感じたクレアに、そんな理屈は通じない。
なんで僕からだってわからないんだよ!!バカバカ!!死んじゃえ!!と顔を真っ赤にし、激昂している。
怒られても、自分には非は無い。寧ろあのトキメキを返してほしい。
それでも、気が静まった頃に、“OK。ただし、手を繋がないなら”とでも言っておかないと、何をしでかすかわからない。
相変わらずのこととはいえ、ダイスケは疲れを感じた。
「ったく、やってらんねえぜ!!」
と、こういう話なわけですよ。Iさん。
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