昨年末に星海社から発売されましたイーストリビュートですが、改めて感想を述べると、ファンアイテムとしてとても良かったです。
サブキャラはあまり登場しないため、アドル・ドギ・エレナが好きな場合にはお勧め、そしてアドル*フィーナが好きな人にもお勧めです。
このように、あくまでもシリーズ全体を通してイースが好きという人向けの一冊になっています。
レビューはAmazonの5つ★評価のが客観的で詳しく述べられています。1000円越えの短編集ということで評価が分かれる所ですが、私はとても楽しめました。特にイースの世界ではアドルの冒険書はどういう立ち位置なのかを明らかにしていてよかったです。
まず、アドルが活躍した時代は9世紀中ごろから10世紀にかけてと時代が限定され、ロムン帝国最盛期であったこと。
アドルの冒険日誌の原本は未だに見つかっていないこと。
そして従来のイースの作品全ては、"アドル冒険譚もの[アドリアン・サイクル]"の一環であると定義したことです。
アドルが存命した時代については各作品ごとでブレが大きく、最初のYs1-2ではイース王国は紀元前のローマ時代のように思えたので、イースの舞台は中世ではないかと思っていました。しかしPCE版Ys4では大砲が、Ys6では海上で大砲を撃ってくる艦隊戦をしたりと、どうみても大航海時代にまで年代が繰り下がってしまっていました。
決して年代を特定するような記述は本編のみならず派生作品である小説・漫画などにもなかったので、1つこれは良い道標になると思います。
そして、どうして850-900年頃だったかというと、アドルが冒険し始めた頃はロムン帝国の最盛期であり、つまり、帝国により街道が整備され、公用語が帝国内で通じ、帝国の通貨が流通したため各地を旅しやすかったという説明が為されています。
そしてアドルが没した以降は帝国は衰退の一途を辿り、少なくとも870年頃、アドル40歳頃にはフェルガナのガルマン地方が王国として独立し、アルタゴはいくつかの国に分裂してるとあります。このため、国を越えて旅することは難しくなってしまい、アドルのような冒険家は出てこなかったということです。
こういう実際の歴史にあったようなことを上手く織り交ぜ、作品の背景として設定に取り込んでいるところが、凄いと思います。もう、序文を読むだけでワクワクしました。
また、原本が未だに発見されていないとすることで、これまでの移植・リメイク・マルチメディア展開された作品全てがイースシリーズであり、例え公式であってもそこに正否はないとされました。
とても良い発想で、一本取られましたv
イースはゼルダと違って、一つの時間軸、一つの世界、一つの歴史ですから、全て繋がってないと本来は矛盾が生じ、おかしくなります。
特にYs4は、SFC派、PCE派、小説派、PS2派、セルセタ派と多くの宗派があり……おそらく今後も宗派間の主張は続いていくでしょうから、こういう形で丸く治められるのは良いことです。
なお、リメイクされた場合の扱いは、歴史的資料などが新たに発見され、原本に近い形で発行された冒険譚、ということだそうです。
とはいえども、序文で「武器商人とともに天空のイースへ行った話は後年の創作であることが判明している」……ってそれ、某社から発行されたゲームブックのイース2のことですね!ユーロ君!!!
同ゲームブックのイース3では、エレナがアドルと同じ冒険家となるというものでしたが、これもネタで仕込んでほしかったなぁ……森瀬先生(はぁと
以下は各編の感想です。
橘ぱん『パルトネルの花嫁』
正統派なイースの外伝的プチ冒険小説。エステリアでの冒険直後のアドルとドギの話ですが、ドギアドとみるかアドフィーと見るかは人それぞれらしいです。(by森瀬遼先生)
マジデスカ、いえ、マジナンデス。
森瀬綾「フェルガナ断章~翼を持った少女~」
エレナ側から見た、「フェルガナの誓い」のサイドストーリーです。
アドルとのやり取りはごく一部のみで、城壁の外で野犬の群れに襲われた時くらいです。しかし、そのときの感想が「私一人でもなんとかなったのにな」っていうのが……。エ、エレナさん!?
エレナ最強伝説を元にした作品ですが、実はエレナはチェスター兄さんより強かったということになってて、うっそぉーん!?という感じです。マジデスカ。
では兄の代わりに人質になり、ガーランドに捕らえられたあとは何をやってたんでしょう…。
大人しく捕まっているとも私には思えないし、もしかしたら一戦交えた後だったりして…ゲフゲフ。
ちなみにフェルガナの話の後はエレナが白騎士になったそうで…なるほど、あの衣装はネタではなくてその後の姿を描いたものだったんですね。(ということにしておきましょう)
そして、1番笑ったのはエピローグ部分のドギとアドルのやりとり。元はSFC版Ys4のエンディングで、ドギとリリアは文通しているという設定を、アルタゴ前の2人の会話に持ってきたところです。
ドギさんマメすぎるv
そしてリリア21歳なのにまだアドルさん本命で思い続けてるんだv
海法紀光「此処より彼方へ、彼方より此処へ」
あ、ありのまま読んだ感想を述べます……!!
さっぱりわからん!!
イースの小説・漫画などは大体網羅していると自負していますが
こればっかりは無理でした。
混ぜるな危険、ロマンシア。
ソーサリアンな某Tkmrさんが本書を購入済みだそうですので、解読してくれるのを待っています……。
小太刀右京「紅の足跡」
アドルに続いて冒険家と呼ばれた青年の目を通した話です。大体870年以降の話で、名前が一切出てこないのが良かったです。本編のサイドストーリーで、オリジナルキャラが出張ると抵抗感があるのですが、こちらはすんなり読めました。メインキャラクターの話ではないんですが、非常に味のある作品で好きです。アドルと同じ時代に生きた人間から見たアドルの話で新鮮でした。
芝村裕吏「最後の前」
試し読みではそれほど心を惹かれなかったのですが、最後まで読むと、萌え上がりました。
おじいさんアドルにも萌えるわ、わたし…!!
マジックアイテムっぽい剣も難破するとなったら海にぽいぽい捨てちゃうアドルさんとか、しれっと嘘の経歴を言ってその場を乗り切るアドルさんとか、やっぱり家族作ればよかったかなあと独身確定なアドルさんとか、読んでて興奮しましたムハー!!私、大勝利!!!
そして、アドルの最期については実家で亡くなったとか、北極点を目指しているうちに行方不明と諸説あるようですが、この話では後者の旅立つ理由が出てきます。な、なんだと…せつないじゃないか!!!
でも、新たな世界に旅立ったのかもしれない、と希望も持てる終わり方でした。
ところで出てきた行政官のお母様はYs5のリジェ…?遺跡で何度も命のやりとりをしたとか、剣の腕前が~ってのは彼女しか思い当たりません。SFC版Ys5だとケフィンと共に消滅してしまったので、小説版の流れなのかな。Ys5でリメイクされたら彼女は生きてて欲しいです。それか原案通り、男に戻してもいいのよ…!?
あと、アドルに帝国大学の考古学の教授の打診があって、本人もそれを断ってなかったってのが、とても…夢膨らむ話でした。ハァハァ
というわけで、私の感想はこんなところですが、非常に素晴らしい一冊でした。
星海社さんと5人の作家たちに感謝申し上げます。ありがとうございました!!
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